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八王子居酒屋ひとり酒

夏だ!酒場だ!八王子だ! 池波和彦のまいぷれ八王子・精選居酒屋【番外編】

八王子の酒場を飲み歩く

西東京エリアは居酒屋不毛と言われるがそんなことはない。

西東京エリア最大の中核市八王子。
平日夕方下り電車超満員の中央線は八王子駅でようやく席が空く。
総人口約58万人の西東京最大の町で、松任谷由美、ヒロミ、滝沢秀明、高橋みなみ、福士蒼汰といった出身芸能人がいる。
八王子駅南口を出ると八王子の新たなシンボルとなったサザンススカイタワー八王子がある。
八王子駅南口の再開発の一環で2010年10月にグランドオープンした。
商業施設のほか市役所の一部機能、多目的ホールなどが入っている。

八王子居酒屋ひとり酒の始まり始まり。

そんな南口の野猿街道と南大通り交差点角にある八王子にその名も高い、熱狂的ファンのいるもつ焼き(小太郎)のカウンターに腰を下ろした。

おすすめは【カシラ】、通はタレじゃ。
「すみませーん、カシラとレバー、タレー」
ハイル、ヒトラーの如くすっと手を上げ注文する。
ングングング……。
本日最初のビールのうまいこと。
カウンター真ん中の炉で焼き手が串をひっくり返す。

両隣は若き美貌のOLが右手にビール、左手に串。
美女二人に挟まれ気も緩み、気分は浅草の踊子を連れた永井荷風だ。
よおし【何が?】。

店を出て北口へ歩いた。
八王子の飲み屋街は北口が中心。

駅前から伸びる「みさき通り」は南口に較べ、スナックのぎっじり入るビルが立ち並び、出勤前のホステスが小走りに行く本格的なナイトタウンである。
今日もお目当ては駅からしばらく歩いた昭和34年創業の老舗(暫)だ。

時計の針を巻き戻したかのような昭和の香り漂う空間に、L字カウンターと入れ込み小上がり。
古いけどよく掃除が行き届き、手入れをして大切に使うおふくろの身ぎれいさだ。
それらの醸しだす往年の大衆居酒屋の居心地は郷愁に満ちる。
昔は良かった、人に温かみや節度があった。
そんな空気が確実にここにある。
カウンターの中には品のよい婦人が二人立つ。
肴は山かけ、あさりバター、冷奴、月見など。
名物はまぐろ刺身で、その一級のまぐろに、並の寿司屋は裸足で逃げ出す。
酒はここと決めた地元の客で連日賑わう。
過ぎ去った昭和の良さがますます人の心をつかんでいるのだろう。
店を出るとちょうど8時、まだまだこれからだ。
八王子駅から北西へ伸びる西放射ユーロードを歩いていくと、駅に向かって右手に黒塀通りの看板がある。
石畳の小径や植樹は、かつての花街の雰囲気を守るべく有志が整備したもの。
江戸の情緒を今に伝えている。

この黒塀通りで何度か芸者とすれ違ったことがある。
そんな中町にある居酒屋(勝っちゃん)に入った。

なんでもない構えで、中も普通の居酒屋だが地酒が揃う。
酒は銘酒居酒屋などと比べると、そこまで種類は多くはないが、「菊姫」「じょっぱり」「男山」などの他、八王子限定酒「高尾の天狗が」ある。
「高尾の天狗」は、八王子の農家に生産委託した酒造好適米【美山錦・五百万石等】と八王子高月清流米「キヌヒカリ」を使用した限定酒だ。
有名地酒だけでなく、八王子のまちおこしのために作られた酒があるところがいい。
そのうえで料理料理しない小粋な酒の肴が揃う。
店を出て歩いていると古い風情の居酒屋(鳥久)が目に飛び込む。
わずかに開いた引き戸から店内の様子が見え、相当古そうだ。
私は古い居酒屋を見つけると入ってみたい。

一席空いたカウンターに腰をおろした。
「オメエほど腹の立つ話し方ができるやつは、そういるもんじゃあねえな。よくぞちっぽけな身体で殺されねえできたもんだ……」
酔っぱらいの男は、論するような口調でキャップ帽を頭に載せた小柄な男をやり込める。
しかし両者の会話はたわいなく、けなした直後に褒め合ったりと全く一貫性がない。
ついに隣にいた客の肝っ玉婆さんが身を乗り出し、小男のキャップ帽を両手でつかみ、鼻が隠れるまでズリ降ろした。
小男の頭はどんぐりの実を逆さにした格好となったが、キャップ帽の下から口を覗かせたまま、壊れたテープのように嫌味な屁理屈を続けた。
店内は騒々しい。
「よっしゃ!焼けたよ」
声の主は年配主人。
焼き鳥をタレで焼いてもらい、瓶ビールを流し込んだ。
炭火で焼き上げる焼き鳥は炭の香りがほんのり。
自家製タレもおいしく、ビールを飲み干し店を出た。

華やかな通りからピンクサロンの並ぶあたりになった。

黒スーツの客引き男が「ヤングレディいかがですか、息抜きに最高ですよ。癒されますよ」と囁きかける。

それもいいがと居酒屋をきき、(しん月)を紹介された。

入口の水槽にアジやカワハギが泳いでいる。
このアジがお目当てだ。
私は活造りをさほど貴ぶ者ではないが「ナニいばってんだ」アジは別格だ。
まるまる一尾を素早く三枚におろし、中骨を帆掛けに、皮を剥いた紅白肌の切身は、歯ごたえ素晴らしく、みずみずしい透明感、上品な脂。
この店、当たりだなと自分の手柄のように胸を張った。
合わせた芋焼酎「富乃宝山」はのびやかにやわらかく大変好ましい。

これぞ大人の居酒屋。
池波正太郎「鬼平犯科帳」の長谷川平蔵=中村吉右衛門が座れば、ピタリと決まる。

そこを出てぶらぶら歩き、おさまらない私はオーセンティック・バー(モダンタイムス)へ。
ここは銀座のバー顔負けの西東京エリア一のオーセンティック・バー。
ジントニックをキュー。
オイラもブンカ人のはしくれだァ……。

↑JR八王子駅北口。中央本線・川越線・八高線・横浜線・相模線が乗り入れ、京王八王子駅もあるターミナル駅。一大酒場街・横浜野毛・中野・神田・新宿も乗り換えなしで行ける

↑花街エリアの飲み屋街。しっとりと飲みたい向きにはおすすめだ

↑多摩地域で唯一の花街・黒塀通り

↑八王子のナイトタウン「みさき通り」は酒場だらけ

↑洋酒考の支店、隠れ家バーモダンタイムスのカクテルは秀逸

 

◆この記事を書いたひと

酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦

 

東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規7000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。

ブログ「日本の酒場をゆく」↓

https://ameblo.jp/m458itmasa/

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