八王子居酒屋ひとり酒
平成九年創業。魚の鮮度と醤油にこだわる実力居酒屋
JR中央線八王子駅北口から歩くこと約四分、みさき通り沿いに居酒屋(名月)がある。
玄関で履物を脱いで上がる素足が気持ちよい。
カウンターに腰をおろし生ビール。
ングングング……。
始めに出る長方形皿のお通し三品いろいろが便利。
【スナップエンドウの生ハム巻き】は酒の友。
挨拶代わりの「本日のお刺身盛合わせ」はヒラメ、カンパチ、サーモン、ヤリイカが登場した。
この日の一押しであるヒラメは切口が鋭角に立ち、色は見るからに若々しく艶があり、硬質な清涼感は、一目で鮮度が違うと分かる。
サーモンの鮮烈なオレンジ色の身はしんなりと締まり、カンパチはピンと立った切り身が美しく、申し分ない脂ののり。
主人おすすめの「信田煮」はあっさりしながら味にコクがあり、たいへん上品なものだ。
八王子で創業二十五年。
地元の客の通う地元の居酒屋の、なごやかな雰囲気がとても良い。
居酒屋は主人の顔を見に行く楽しみもある。
白衣の主人はニカニカした笑い顔で「いらっしゃい」とものやわらかく迎え「こちらへ」と席を案内する。
ややおいて「ご注文は何に致しましょう」と声をかけ、「○○、お待たせしました」と手渡す。
手が空くとなじみ客に「お久しぶりです」と声をかけるが、決して一人に集中することなく、その気配りの公平感が安心できる空気を作り出す。
店内が常に平和で楽しいよう気を遣う主人が、この店の客の「酒品」「店品」を作っている。
居酒屋の楽しみの上級として「店の主人や女将と話をする」がある。
これは初めは無理をしないほうがいい。
居酒屋のカウンターに陣取り主人相手に丁々発止だ、とばかり、最初から「オススメは何?」「今はやっぱり牡蠣だねぇ」「料理はどこで修業したの?」などと喋りまくる人がいるが、店の方は相手がどんな人かわからず、適当に相槌をうつしかない。
そういう人はまた、一人で主人を独占し、店の主役顔をしたがる。
自分に自信がなく、静かに飲んでいるのが不安な裏返しだ。
会社でも出世しないぞ。
そうでなく、店の方から「なんとなく感じの良い人だな、どういう人か、ちょっと話でもしてみたいな」と思われてから、おもむろに口を開けばよい。
↑鮮度重視の刺身は歯ごたえと清潔感が魅力
↑主人おすすめの信田煮。520円のリーズナブルな料理をすすめるところが好ましい
↑お通しは店の名刺代わり。お通しで店のレベルがわかる
↑店先の黒板にその日のおすすめがずらりと並ぶ
店名 | 名月 |
住所 | 東京都八王子市三崎町3-4 RJスクウェアビル 1F |
営業時間 | 17:00~23:00【土・日】16:00~23:00 |
定休日 | 月曜 |
連絡先 | 042-624-5114 |
関連リンク | ホームページ |
◆この記事を書いたひと
酒場ライター:居酒屋伝道師・池波和彦
東京生まれ東京育ち。酒場巡りを趣味とし、北は北海道の離島から南は沖縄の離島まで新規7000軒以上の店を巡りブログ「日本の酒場をゆく」を執筆。毎夜全国の居酒屋やバーにて神出鬼没の酒戦の日々を過ごす痛飲派。
ブログ「日本の酒場をゆく」↓
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