子どもと家族と私とわたし
皆さん、こんにちは。
家族のしあわせを対話で作る、ふぁみりあすのあゆみんです。
先週末、早朝から車を飛ばして長野県佐久穂町まで弾丸日帰りひとり旅をしてきました。
「イエナプラン」という最近、日本で注目されているオランダの教育についての研究会に参加してきたのですが、単身で長距離移動したのは久しぶり。
そういえば、初めてのひとり旅っていつだったかなぁ。
そんなことを思いながら、車を走らせていました。
皆さんは、初めてのひとり旅のこと、覚えていますか?
ひとり旅。
その甘美ながら緊張を含んだ私の最初の記憶は、小学2年生の夏休みまでさかのぼる。横浜の2つ先の駅に住むおばあちゃんの家に品川から電車で向かったのが私のひとり旅デビューだった。
品川駅まで付き添ってくれた母が、車内にいるすこし品の良さそうなおばさまに私の下車駅を伝えていて、「もし降りそびれそうなら声をかけてあげてほしい」と頼んでいたのを覚えている。
いつも乗る電車にはない、向かい合わせのシート。今までならあそこに母とふたり並んでおしゃべりする楽しい時間だったのに、今日は私ひとり。おばさまとつかず離れずの距離を保ちながら、大好きな向かい合わせのシートに座ることもできないほどドキドキして窓の外を眺めていた。
ちゃんと降りられたのか。駅から30分は歩く祖母の家までどうやって行ったのか。そのあたりのことは何も覚えていないけれど、品川駅でおばさまに娘を託す母の姿と、ドア横に立ちっぱなしだったことだけは鮮明に記憶に残っている。
今にして思えば、母はあの時こう思っていたのだろう、「かわいい子には旅をさせよ」って。おかげで高学年になるころには、電車に乗ってずいぶんあちこちに出かけていた。
記録的長寿番組にして人気番組の「はじめてのおつかい」でさえ、幼児をひとりで買い物に出すなんてと非難の的に昨今である。小学生と言えども、ひとりで電車に乗ってどこかに出かけるなんてことはなかなかしづらい世の中になっている。
幼心に感じる緊張と誇らしさと不安がごちゃまぜになったあの複雑な感覚は、大きくなってからでは味わえない。経験の少ない年齢だから感じられる貴重な感覚なのだ。
「かわいい子には旅をさせよ」とはよく言ったものだ。ごちゃまぜになった感覚を抱えながらひとりで旅した経験は、小さな自信とさらなる挑戦への土台となる。その機会が作りにくいこの風潮は残念。
私も小学生の子どもがいるから、その心配には共感するところもあるのだけど、旅をさせてあげたいなぁとつい思ってしまう。
どこにでも飛び込んでみるっていうのもおもしろい!
ところで、数年前の話になるのだけれど、ひょんなことから私は小4と年中の子どもたちと共にニュージーランドへ1か月半の母子留学をしてきた。
のっけからパスポートを紛失して血の気が引くというアクシデントに見舞われ、ようやく到着したステイ先ではファミリーがバカンスに出ていて不在。玄関ドアの暗証番号を教えてもらって留守宅で初夜を過ごすという謎の展開。
予約しているとは言え、見ず知らずの外国人を留守中に泊めるなんて私の常識ではあり得ない! そのうえ、荷ほどきしていたら洗面道具一式を機内に忘れていたことに気がついて、翌日またまた空港へ舞い戻り……。
休日にドライブに出かけた時には、ガス欠サインに大あわて。
ガソリンスタンドを探すものの、走れど走れど地平線につながる直線道路と両脇に広がるのどかな牧草地。「走行可能距離」とにらめっこしながら恐る恐る進む。
そうこうするうちに、ナビ代わりに使っていた(ナビなしレンタカーだったの)頼みの綱のスマホはバッテリー切れ。
車を路肩に停めて、ヒッチハイクさながらに車を呼び止めて地元の人しか行かないような脇道の奥にあるガソリンスタンドの場所を教えてもらって命拾いしたこともあった。
本当にいったいどれだけアクシデントの見舞われたことか。
そのたびに「どうしよう、大変だー」と焦りまくり、「これで大丈夫なのかなぁ」と不安を露わにする母。
日本にいる時はうっかり屋さんだけれどそれなりに頼りになる母が、右往左往して戸惑い、答えを見つけられずに困っている。そんな母を、むしろ子どもたちの方が励まして安心させてくれるのだった。
この時はまだ写真撮る余裕があったんです。
まさかガソリンもスマホのバッテリーもゼロになるとは!!
プラニングされたツアーだったらクレーム必至のアクシデントの数々は、けれど確実に私たちの「生きる力」を育ててくれた。いや、「生き抜く力」かな。
帰国してからの子どもたちは、なんだかちょっぴり図太くなった。繊細でプレッシャーに弱かった長男は、帰国してたった1週間で音楽祭。リコーダーの指使いが周りの子とずれていたけど、「そんなもんだよ、1週間も練習できなかったんだから」とケロリと言ってのけた。
予定を組んで出かけるのが「旅行」だとしたら、ざっくり行き先と日数しか決まっていないのが「旅」だ。旅にはアクシデントというドラマがついてくる。
普段の暮らしの中ならオホホと笑ってすましていられるお母さんだって、ひとたび旅に出てしまえば思いもよらぬアクシデントに直面して取り乱したり慌てたりする。普段とは全然違う親の姿に、子どもは面食らったり戸惑ったりもするだろう。そして、自分が支えなくちゃと思ったりもする。
子どもは、どこかで大人は何でも知っていて、何でもできると信じている。けれど、人間いくつになったって完璧にはなれないものだ。どっこい、それでも生きている。あたふたしながらも何とか乗り越えて青ざめながら笑ってるんだ。子どもが抱いている完璧人間の幻想なんてさっさとぶち壊してしまえばいい。失敗して、ずっこけて、それでも生きていけるって、旅を通して子どもたちは気づいていく。
かわいい子に旅をさせるのはなかなか難しい時代だからこそ、現代のファミリーに勧めたいのは「かわいい子とは旅をせよ」だ。失敗しても乗り越えられる。乗り越えられなくても生きていける。レジリエンスって言うんだっけ、「困難に直面しても適応できる力」が育つ、親も子も。
夏休みも残りわずか。この週末はお子さんと一緒に行き先決めない小さな「旅」をしてみませんか?
生田あゆみ
元私立高校教員
教育コーディネイター
子育てファミリーサポーター
ちゃんとしなきゃで子育てをしていたら酸欠になりました。
そういえばこの感覚、教員時代にも感じていたぞ?
おかしいな、なんでうまくいかないのかな?
そんな思いから学びを深めていくと、教育も子育ても古い価値観にとらわれて自分の感覚を置き去りにしていることが分かりました。そして、私と同じように自分を失くして子育てしている人たちがたくさんいることも知りました。
現在は、「わたし」を軸にした子育てマインドの育み方をお伝えするファミリアスと、「教育を選ぶ」をサポートし、学校選びの選択肢を増やすポータルサイト「教育移住.com」を主宰しています。
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